最近では、お土産は貰うものではなく完全にあげるものになってしまいました。同じようにお土産を渡しても非常に喜ばれるものや明らかにどうでもいいやと言う感じのものもあります。手渡しのお土産の場合にはできるだけ重い物を避けて且つ地域ブランドが通っていたり個性的なものにするように心がけています。
様々な地方に行きますが一番種類も豊富で万人に喜ばれるのが北海道土産です。
北海道の土産物をよくよく考えてみると私達のビジネス成功のヒントが沢山あるように感じます。その1つが市場要求(顧客要求)へ対応した土産物の歴史です。
〜土産物草創期〜
かつて北海道土産と言えば、アイヌの格好したおじさんが手彫りしていたクマ(が鮭を銜えている)の置物や荒巻しゃけやカニなどでした。北海道土産の草創期は、いわゆる"らしさ"(北海道でしかないもの)であって且つ大量生産品が主でした。
この頃の主力客は青函連絡船で行く社員旅行や温泉旅行といった、おじさん・おばさんが主力だったのでした。


〜土産物成長飛躍期〜
その後飛行機輸送の発達や1972年の札幌オリンピック開催辺りから大学生などの若年層も頻繁に北海道旅行をするようになります。この頃一大北海道ブームがあって、JR広尾線の愛国から幸福までの切符やスカイラインのCMで有名になった美瑛のケンとメリーの木ブームなどがありました。そうすると土産物の主体は六花亭のマルセイバターサンドや石屋製菓の白い恋人たちが登場し北海道土産の定番と化していきます(もちろん今でも多くの方が買っていかれます)。
従来の置物やカニ・鮭といったものから、チョコレートやクッキーという、いかにも購入者のイメージに合わせた商品開発や購買欲をそそるネーミングづけに重点が置かれていくようになります。この時点では購入者を意識した商品開発を重点に大量生産、大量消費の時代が続きます。
時代は進んで、さらに日本中の交通の便が良くなりインターネットの普及による即時の情報流通により北海道の土産物に大きな変化が…。つまり新鮮なカニ、鮭、ホタテや森のイカメシ弁当、長万部のカニメシ弁当、白い恋人たちやマルセイバターサンドも全て地元デパートの特別催事コーナーで簡単に変えるようにしまい、わざわざ北海道で購入して貰わなくとも良いものになり下がってしまったのです。大量生産、大量消費、物流革命など従来突き進んできた政策によって北海道土産のコンセプトや"らしさ"が完全に無くなってしまったのです。こうなると北海道土産自体の価値は下がり、かつては満面の笑みで土産をもらっていた方もニコッ程度の愛想笑いで受け取るようになってしまったのです!(私の体験談だから間違いありません)
すると世のおとっつあん方は土産物に頭を悩ませることになったのです。普通のものでは喜んでくれないので、少し値を張り且つ重いが夕張メロンを購入したり、新鮮な牛乳を保冷パックに入れてもらって持ち帰ったりと大変でした。

〜販売市場絞り込み戦略期〜
バブルも終盤に差し掛かり実感のない経済成長が始まるとまた若年層と海外の方を中心に北海道に来る方が増えてきます。そこで出てきたのが過去の失敗を繰り返さない⇒つまり道内でしか買えない!且つ今までにない商品化ものというブランドでROYCEの生チョコが登場したのです。当然バカ売れ!北海道に出張に行くというと必ずこの生チョコを頼まれました。私は普段あまり甘い物を口にしませんが、この生チョコを食べてみたら確かに従来食べた事のない食感、味でした。この提供エリアを地元に絞り込むという戦略とチョコという誰もが食べた事のあるものをリニューアルして新たな商品企画を行ったということが画期的な土産でした。その後暫くは生チョコの一人勝ちになります。
同じようなコンセプトで作られたヒット商品の中には札幌味噌ラーメン有名店のパック化されたものです。下手すると一人前の料金が店で食べるのと同じくらいのものが飛ぶように売れていました。しかし当然のことながら人には"飽き"が来るのです。ライフサイクルの終盤に差し掛かった商品はその後どうなったか?それはかつてのウリを全て逆に展開して、道内でなくとも購入できるようになったり(特にネットショップなど)、生チョコではなく通常の板チョコでの商品企画を行ったりしています。もちろん今でも多くの方が購入していますがかつて並んで購入したほどの勢いはなくなりました。

〜絞り込み戦略+少量多品質生産期〜
そして今北海道を代表する土産と言えばご存じのとおり花畑牧場の生キャラメルです。この商品を知らなかった私は、家族から購入命令が出て"YES"の3文字で北海道に出かけました。しかし空港も土産物屋も2時間待ちの行列です。しかたなく依頼された花畑牧場の生キャラメルではなく類似品を購入して帰りました(当然怒られましたが)。
この商品の成功点は生チョコに見られた購入エリアの制限をさらに絞り込んだこんだこととかつて行われていた大量生産の真逆を行く少量生産、しかし高品質追求を実現したからと考えられます。もちろんTOPが芸能人でネームブランド力もあったということも要因には挙げられますが戦略的に優れているから成功したのだと感じます。また商品企画の視点から生"キャラメル"というものも良かったのでしょうね。"意外性"の商品化の成功事例だと思います。また金額が1000円以下と購入しやすい価格付けも良かったのでしょう。もちろん今後この商品にもライフサイクルがあって衰退していくことは間違いありませんが、現時点の市場要求を満たした素晴らしい商品であることは間違いありません。私達がこれから仕掛けるべき商品企画の視点は次のようにまとめられると思います。

1.徹底した絞り込み作戦(対象地域、対象者(性別・年代・国など、対象商品)
2.少量高品質生産体制
3.値頃感
4.意外性や斬新性
5.中期(2年や3年)で回収しきる事業計画と時期につながる戦略策定
当社が支援している士業事務所の経営でも全く北海道土産の歴史と一緒です。
1960年代、70年代、80年代と提供し続けてきた陳腐化された商品を本当に見直して今の時代の要求や期待に沿った形で商品企画を進めていく必要性が絶対にあると確信しています。もちろん士業事務所だけでなく、建設業も農業も飲食業も全て一緒です。
どうぞ皆さんも上記5つの視点で自社のマーケティング戦略を再構築してみて下さい。
*イプシロンでは業務標準化、サービス企画開発、情報セキュリティ管理対応策、WEBブランディングなどのコンサルティングを実施しています。詳細は各コンサルティングメニューをご覧下さい*
イプシロンコンサルティング 代表取締役 角田 達也