道路が渋滞していることもあってバスは結構満員状態。虎ノ門、赤坂アークヒルズ、六本木、西麻布と東京の中心をバスは進む。すると赤信号で停車したら何やら怪しい言葉が大音響で車中に響いた!
『以前にどこかで聞いたことのある声』『全体的に何を言っていたかわからないが最後にルミネ・ザ・吉本を宜しくと言っていた』『そして一番最後に‥フォー!との声』。
この時になって思い出しました!喋っているのは吉本興業のレイザーラモンHGという芸人さん。
そう言えばつい最近TVで、都営バスの車中で喋る広告と言うことで何名かの芸人さんがアナウンスをすると言っていました。たまたまそれに遭遇したのです。
しかし実際は‥。かなり満員だったこともあり良く話の内容が聞き取れない。それ以上に何故かとてつもなく恥ずかしい!のです。
OLやサラリーマンはゲラゲラ笑っているし、年配の方は何が何だかわからない様子。小さな子供は真似してフォー!と大きな声で喋っている。
この企画を考えた方は実際にこのバスに乗車してみるとわかると思います。とてつもなく恥ずかしく且つ失敗だったということを。
と、ここで話は変わって‥。全国の士業事務所に行くと様々な応対パターンがありますが、割と最近多いのが喫茶店のように自分が飲みたいものをメニューの中からオーダできる所があります。
大概は『温かいお飲み物』と『冷たいお飲み物』が記載されていて(と言っても喫茶店ではないので、コーヒー、紅茶、緑茶、ジュース程度ですが)、きちんと玄関からソファーまで通してくれた女性が要望を聞いてくれます。
そしてすばやく注文した飲み物が目の前に無造作に出されてきます。それもスプーンや砂糖の位置が逆だったり、目の前の上段から差し出されたり‥。
こう言った事務所の所長先生!実際に自分で玄関からソファーに通されて一通りの儀式を済ませてからコーヒーを出してもらって下さい。何も感じませんか?
全く異なる2つの企画を例に出して見ました。
両方とも私が最近経験した企画例です。それもどちらかというと失敗に近い例です。
例えば都営バスの声の広告については、『何を言っているのか聞き取れない』『何を広告したいのかがわからない』『聞いている方が恥ずかしくなる』といった企画です。
個性が強く最近人気の芸能人をバスの広告アナウンスにするという発想自体は良かったのでしょうが、実際にやってみたら効果はほとんどないでしょう(最大の効果はそれ自体の仕掛けをTVが取材し報道したことでしょうか)。
私ならばこの発想を次のように変えてみます。
バスの運転時間や路線によって広告する内容と広告する人を厳選します。特にその時間、路線にどのような方が乗車しているかが重要です。お年寄り?学生さん?OLの方?下町?山の手?繁華街?
例えば、下町の路線で割りと年配の方を対象とした声の広告であれば、私なら噺家の方を起用すると思います。お囃子つきでね。東京のイメージも良くなるでしょう。
繁華街をメインで走る路線で20代前後の方が多く乗車する時間帯ならば、人気のクラブのDJを起用しても良いでしょう。
『市場と商品』を明確に且つ細分化していけば自ずと新たな企画を活かす戦術が浮かんでくるでしょう。
また、事務所で喫茶店のように飲み物を聞いてもらえるサービスについては、単なる他社の物まねや押し付けでは私のように顧客不満足度を引き起こします。
この場合には、オーダーサービス企画自体の発想は良かったのですが、そのサービスを現実に実施する際の教育訓練が全くなされていないことに大きな問題があります。いくら形だけを真似したり人から聞いてやってみても、その本質を教え込み、何度もリハーサルさせることが重要なのです。
つまりオーダーを聞くと言うサービスを際だたたせるためには、テーブルマナーや接客術を学んでリハーサルまでしないと、この新たな企画を活かせないのです。
そこで、新企画を成功に導く秘訣とは?
それは『非常識の世界』から生まれた発想を、『常識の世界』に置き換えて現実化することです。そしてそこには、全てにおいての"基本"(この例で行くと、『市場・商品の細分化』や『リハーサル』)を無視しては絶対に市場から受け入れてはもらえないと言う原理原則があるんだと言うことを肝に銘じておいて下さい。

薩摩富士開聞岳より長崎鼻を望む!です。モデルは決してレイザーラモンHGではありません。