今でこそ世田谷と言えば高級住宅地ですが昭和40年代初めまでは畑ばかりで非常に交通の便の悪い所でした。逆に言うと多くの自然が残っており、東京都内というよりは東京近郊農村のイメージがピッタリでした。世田谷には今でもNHKの放送技術研究所を始めとして、東宝の撮影所、新東宝撮影所(今は名前が変わっています)、撮影に使用する美術・舞台会社、フィルムの現像所、撮影に出演する役者さんが所属するプロダクションが沢山あります。世田谷のお隣の狛江市には日活の撮影所もありました。そのためか??成城学園には多くの俳優さんや女優さんが今でも居を構えております。そんな成城の隣に砧(きぬた)という町があります。ウルトラマンの生みの親である円谷プロダクションがこの砧にあります(現在円谷プロの本社は区内の別の場所に移転)。
【ミニ知識】
ちなみに砧(きぬた)というのは、布を作る際に叩いてなめすための道具です。小さい棍棒のようなものと思って下さい。大昔、多摩川で取れる麻などの植物繊維を川の水にさらして布を作り、この辺りの方(渡来人のようです)は朝廷に納めていた模様です。そこで今でも町名に、砧を始めとして調布(租・庸・調の調)、田園調布、狛江などの地名が残っています。
さて、ウルトラマンに話しを戻しましょう!ウルトラマンは今年で生誕40周年らしいです(初代ウルトラマン=ゼットンやゾフィーが出てくるやつですね)。ちなみに私が42歳ですから私の弟といった所でしょうか。それだけに1960年代生まれの方はウルトラマンになじみが非常に深いと思います。
ウルトラマンのすごい所はいまでもウルトラマンメビウスが放送されているように非常に息の長いキャラクターであることです。あのディズニーのキャラクターのように今後も行き続けていくのかも知れません。
そんな訳で世田谷がウルトラマンの生まれ故郷であり且つ生誕40年ということで世田谷近郊の各所にて様々なウルトラマン企画、イベント展をしております。
先日世田谷文学館という所のウルトラマンイベントに行って来ました(1人で行くのは恥ずかしいので40代のおっさん3名で行って来ました)。夏休みとあって沢山の親子で賑わっていましたが、ウルトラマンがTVに誕生する前の軌跡が細かく資料とともに展示、解説がなされておりました。1つ1つをじっくりと確認すると、何もウルトラマンだけに限ったことではない、ロングラン商品やサービスの作り方のヒントがあったのです。私が感じたヒントを記載しますのでどうぞ皆様のサービス企画の上でも参考にして下さい。
ヒント1.自身が夢を持って楽しめる仕事でなければならない!
ウルトラマンがTVで放映される(ちなみに当時は30分番組で実質は22〜23分の内容でした)までに関わるスタッフは総勢100名近くになるそうです。スタッフの皆さんの共通項は、この子供向けの番組に自身の夢をオーバーラップさせて真剣に作品を作り上げたことで、単なる怪獣のプロレスごっこではなく、環境問題、戦争、人種差別、自然保護など様々な視点からの社会問題を風刺して物語に仕立てたことです。そのために40年経っても内容が全然古くならないのです。
ヒント2.視聴者に見えない細部こそ全力で納得して仕事を行う!
様々な怪獣のスケッチ(着ぐるみのもとになるもの)が展示されていましたが、驚くのは怪獣の内臓や血の色までこと細かに決められていることです。通常怪獣がウルトラマンにスペシウム光線で退治されてしまう折には、大抵の場合爆発してしまうのだから内部など関係ないかもしれません。
しかし内部を描き出すことによって、その怪獣の動き方、泣き声、俊敏性などに特色が出るそうです。仕事は表面だけでなく見えない裏側をきっちり仕上げてこそ本当の仕事になるのです。ちなみに未だに40年前の怪獣が現代でも活躍しています(エレキング、ゼットン、キングジョー、アントラーなど)。
ヒント3.将来について徹底的にイメージされた企画(商品)に仕上げていること!
ウルトラマンを見ると、当時は斬新過ぎて笑われていた企画も今となってみれば現実になっているものが沢山あります。例えば科学特捜隊本部の電話の音=当時は大きなベルの音が主流でしたが作品の中では今の電子音に近いものです。またビートルという宇宙まで行ける乗り物は、当時は宇宙ロケット型が当たり前でしたが、今まさに宇宙に飛び出しているスペースシャトルと同じ形をしています。目先の発想ではなく様々な議論を積み重ねての将来展望が作品(商品)には必要です。
ちなみにウルトラ警備隊が使用していた腕時計で会話ができるものは今では十分に技術対応できるまでになりました。
ヒント4.本当のプロは沢山の練習を積んでいる!自身の役割をわきまえよ!
音響の方は怪獣の鳴き声をイメージするのに何日も悩んでイメージがわかないのでついに家庭内でもガォーとやっていたら奥さんに白い目で見られたというような逸話もありました。怪獣の中に入る方は怪獣の動きを創り出すために何日も動物園に通って動物を見ながら実際に動きをトレーニングしていたそうです。
さらには、怪獣の着ぐるみを着ているのでどんなに怖い顔をしてようが、恐怖におののく声を出そうが外には伝わってきませんが、自身が役になりきり、本物を出そうとすると見えない所での真剣な演技が重要だそうです。人が見ている時だけがんばっても感動する商品やサービスは創り出せないのです!
ヒント5.息の長い商品・サービスであるためには"美的感覚"が絶対に必要!
円谷プロの創始者である円谷英二さん(ゴジラの生みの親でもあります)や円谷一さんの言葉がウルトラマンの監督を務めた実相寺さんの本に記載がありました。そこには子供たちが見る番組で且つ夢や希望を与える番組作りではリアリティーだけでなくきれいな見せ方、美しい見せ方、すばらしい音楽など必要であることが書いてあります。
また怪獣はたんなる悪者ではなく、ちょっと人とは見かけが異なり今の時代に合わなかっただけのものという位置づけ=コンセプト=を全作品に受け継いで作られているそうです。時代が変わっても私達人間が求める共通性は普遍的であるということでしょうか。
このように数時間ウルトラマンの勉強をして、改めて家に帰ってウルトラマン作品の一部を実際に見てみました。なるほど!何故ウルトラマンが40年も人気を博し続けているのかの一端がわかったような気がしました。
商品やサービスを作り上げると言うことは、単なる作業ではお客様は感動してくれないのです!ましてや全てヒト任せでは、夢・情熱・コンセプト・努力・練習・知識が何も反映されない本当につまらないものになってしまいます。
世のお父さんたち!もう1回ウルトラマンをじっくりと見直してみましょうよ!
*イプシロンでは商品・サービス商品企画/演出/実践セミナー支援などのコンサルティングを実施しています。詳細は各コンサルティングメニューをご覧下さい*
イプシロンコンサルティング 代表取締役 角田 達也