昔はあまり"説明責任"という言葉は聞かれませんでしたが最近は何かと言うと使われます。私にとって"説明責任"というのは他人事だと思っていましたが、つい最近この"説明責任"の重要性を痛感する事件がありました。
またしても起きたハプニング!
私はこれまでにも日常の生活であまり経験しないようなことを数多く経験してきています。例えば乗車したタクシーの運転手さんが高速道路上で脳溢血で倒れたり、同じくタクシーに乗車したら高速の出口を間違え高速道路をバックで走行したり、はたまた登場した飛行機のオイルが破損によって飛行中に全て空中に漏れてしまったり‥。よくまぁ今まで生きてきたなーという感があります。
そしてまたまた最近体験しました!それは乗車していた高速バスが事故を起してしまったのです‥
それはセミナー開催支援のために11月初旬に名古屋から長野県の伊那市へ向かっていた名鉄バスでの出来事です。
定刻に名鉄バスセンターを出発した高速バスが瑞浪インターにさしかかった頃でした。うとうと居眠りをしていたら突然『グチャ』という大きな音と衝撃がありました。あわてて目を覚ますとトンネルの入り口付近。バスはトンネルを抜けると急停車しました。
その直後に運転手さんが『車体検査をします』と言って社外に出てしまいました。その後30分間乗客は高速道路上のバスの中で状況もわからず待機。やがて道路公団の人と岐阜県警が到着。何やら作業をしております。すると警察がバスに乗り込んできて『怪我人はいないか?』と尋ねる。次にバスの運転手さんが『事故処理のために後続のバスに乗り換えて下さい』とのアナウンス。我々は一体何が起きたのか、頭の中が『???』。
すると待つこと20分。後続のバスが到着して高速道理上の路側帯で乗車。10分ほど走行すると休憩場所の恵那峡SA(サービスエリア)に到着。
しかしこの時点でも何も説明がないので私はついにブチキレ!名鉄バスに対して、一体何が起きて高速道路上でバスを乗り換え且つ予定よりも1時間も遅れたのかの説明をしろと問いただしました。
すると後続のバスの運転手さんは『自分も無線で乗り代わりがあるので乗車させるようにとの指示を受けただけ』との返答でした。
さらに私はブチキレ!それならば会社に問い合わせして理由を聞き出して説明をしろ!と要求。
15分間のSAでの休憩が終了して、何故か運転手さんが理由もなくおもむろに乗客1人1人にお茶のポットボトルを無償配布。
バスはSAを出発する段になって、先程の理由を説明しだしました。そして状況が把握できました。
実はこのようなことが起こっていたのです。
『瑞浪付近のトンネル内で道路公団が工事を開始するところを名鉄バスが通過した。ちょうど工事開始時期だったので工事用のパイロン(コーンとも呼ばれる工事現場に立っている三角柱のこと)を置く作業中に、バスがパイロンを巻き込んで車体に大きな破損を追った。事故処理のために後続のバスに乗り変わってもらった』とのことです。
現場での説明責任実践がトラブルを大きくする!
皆さんは現場にいなかったですがこの状況をご確認頂いてどのように感じましたか?
私はすぐに次のことを感じました。
1.高速バス走行中のアクシデントとして、故障や事故は予め想定できるもの。そのアクシデントに対しての対応手順や対応策が全く実施できていなかった
2.後続バスに対での(さらに言うと全社での)情報の正しい共有ができていなかった
3.名鉄バスという会社が"乗客に対して何を提供するのか"という根本的コンセプト(経営方針であり、理念であるかもしれません)が現場で全く理解されていなかった(→通常旅客業では"安全"や"(時間)正確"や"利便"なのでしょうが‥)
私はバスが事故を起して約束の時間に1時間以上遅れてしまったという事実に対してクレームを言うつもりは全くないのです。それはヒトが介在しているのだから起こりえるリスクです。事故は自身(運転手)がどんなに注意していても、巻き込まれたりする可能性もあり、加害者だけでなく被害者にもなり得るからです。
問題は上記3つの視点と対応が全く欠落していた点です。おそらく本来ならば次のような対応があってしかるべきと思います。
1.まずバスを緊急停車させたお詫びを行なう
2.乗客の安全を確認する
3.現在の状況を説明する
4.現在の状況に至った理由を説明する
5.今後どのようにするのか(是正)を説明する
まず、上記1に関しては私が後続のバスの運転手さんに説明依頼を求めるまで何もありませんでした。
2に関しては運転手さんではなく岐阜県警の警官が行ないました。
3と4は私が後続の運転手さんに促して本社に問い合わせを行なってようやく解説がありました。
つまり現場での説明は4しかなかったのです。
果たしてこれで事故を起した運転手さん(会社)としての説明責任は果たせたのでしょうか?説明責任と言うと会社のお偉方が出てきて報道陣のフラッシュを浴びて言い訳している姿を想像しますが、実は現場での説明責任を果たすと言うことはトラブルを大きくするかどうかの鍵を握る重要な局面なのです。
さらに他の乗客を怒らせた要因も付け加えると‥。お詫びのためだろうと思いますが、運転手さんが(おそらく無線で会社に指示されて)ペットボトルを休憩終了後に配布したことです。
もしも"トラブル手順書"のようなものがあって、『何らかのトラブルにより15分以上の遅れが出た場合には休憩場所にてペットボトルを無償で配布する』というルールが明確になっていれば、SA到着前に配布のインフォメーションができていたはず。
しかし何も知らない私達はめいめいに飲み物を買ってきてしまいました。私の隣にいた方は全く同じ銘柄のお茶を購入していました。これでは何の意味もないフォローです。
このように良かれと思いフォローすることも、やりようによっては逆効果を生むことになってしまうのです。
皆さんの現場では説明責任対応トレーニングをしていますか?
先ほど記載したように私達はヒトですからどんなに注意してもエラーは起すのです(何故エラーを起すかと言うことは、私の"ヒューマンエラーセミナー"を受講頂くかDVDを購入して下さい)。
従って日常現場で想定されるエラーを書き出して、対応手順を明確にし、必ずその手順を基に現場でトレーニング(ロールプレイング)して評価をし合って下さい。
〜もしも交通渋滞で重要なお客様への訪問が15分以上遅れてしまう場合〜
〜チェックしたはずの試算表が顧客説明の段階になって誤っていることに気付いた場合〜
〜A社に対して発信するはずのFAXを誤ってB社に発信してしまい、B社から指摘を受けた場合〜
いかがでしょうか?このようなエラーは十分想定できるでしょう。
エラー、ミスを犯した場合に、『隠す』『嘘をつく』『ごまかす』ことだけは避けなければなりません。
早速皆さんの現場へ聞いてみて下さい。
納得できる説明がなければそれは説明責任を十分に果たしたとは言えません。
早速全社でトレーニングを始めましょう!
*イプシロンでは業務改善支援、課題の抽出、工程の可視化、業務標準作りなどのコンサルティングを実施しています。詳細は各コンサルティングメニューをご覧下さい*
イプシロンコンサルティング 代表取締役 角田 達也
三浦半島三崎のマグロ
1.乗客の安全確保及び誘導
2.事故の状況確認、怪我人の有無を確認後関係機関にTEL
3.会社に報告し指示を仰ぐ
4.乗客に対し説明とお詫び、後続のバスの到着予定等のご案内
この順番でいいと思います。説明は安全確保の後です。運転士の基本です。
日々、安全運転とお客様の快適な移動に尽力しております。
事故発生時の手順としては、
乗員乗客及び後続車両等への二次災害の防止
乗客乗員の安否確認、安全確保
事故状況の把握及び関係機関への連絡通報
乗客に対し状況の説明及びお詫び
となります。
公道上を走行しているため、二次災害の防止が最優先されます。
事故が発生したからと言って、本線上で安易に停車し続けることはできません。
乗客乗員の安否確認については、ルームミラー等で事故発生時に車内での乗客の座席からの放出、トイレ利用などの立ち席客の転倒など重大な事態が発生していないことを確認して(高速走行時は原則シートベルト着用案内もしております)、直接のお声がけによる安否確認の優先順位を下げた可能性も考えられますが、おそらく、停車直後に「お怪我はありませんか?」等のマイクでの案内があったかと思います。
私たち乗務員はそのように教育訓練されております。
乗客乗員の安全確保及び安否確認ができた後、事故状況の把握及び必要な関係機関への連絡通報が開始されます。
乗務員は事故の概要を会社に詳細に報告し、関係機関への連絡は会社側が担います。
代行バスの回送手配か、後続バスへの乗換えか。
その日の運行状況によって選択肢が変わります。
会社側は乗務員の報告がない限り次の手を打つことができません。
乗務員も会社側の決定がない限り、お客様へ代替手段をご案内することはできません。
お客様は移動手段として高速バスをご利用になる方がほとんどです。
原因が何であれ、事故による遅延が発生している以上、次の手段を迅速に手配する必要があることはご理解いただけると思います。
そして、全ての段取りが完了したところで、初めてお客様へ事故の説明、遅延のお詫び、代替手段のご案内となります。
『隠す』『嘘をつく』『ごまかす』事を当該乗務員及び会社側はしたでしょうか?
今一度思い出してみてください。
警察官による負傷の有無の確認は、お客様のためのものではありません。
事故を「物損」として取り扱うか「人身」として取り扱うか、事故調査の最初の選択肢です。
怪我があるとなると、当該事故は「人身事故」として道路封鎖又は車線規制などを実施しての現場検証が開始されます。
警察官は「接客業」ではありません。
最近のお客様の中には、バスの乗務員を単なる「接客業」と勘違いされてよくブチギレる方も少なくありません。
私たち乗務員の最大の任務はお客様を安全正確に目的地にお連れすることです。
様々なアクシデントが発生した場合でも、最優先で求められるものは「安全」です。
他の業種のことはお互いにわかりにくいものですね。